授業紹介:マネジメント・ケーススタディ①

 会計ファイナンス学科教員の伊勢坊です。私が担当している授業「マネジメント・ケーススタディ」を紹介します。
 この授業は、実務経験のある方々を講義にお迎えし、自身が携わった具体的なビジネスの経験をもとに、課題の発見から解決にいたるプロセスを、臨場感あふれる「ライブケース」として展開します。学生は、教員や実務家と共にディスカッションに参加し、当事者の視点に立って、課題解決の現場を追体験することを目指し、ビジネスモデルを考え、発表します。各ケース共に、グループでビジネスモデルを練り、発表を行うため、負荷の高い授業ではありますが、学生からはとても好評な授業です。

 今回、ご講義いただいたのは、株式会社国際社会経済研究所の宮脇啓透先生です。宮脇先生には、本学科で「ビジネス・コンピューティングIII」「ICTビジネス入門」の授業を担当していただいており、また、本学現代ビジネス研究所の研究員として研究活動に従事されておられ、本学と大変ゆかりの深い先生です。宮脇先生のご専門はITビジネスということで、ITサービスにおけるコンテンツビジネスについてのご講義を賜りました。
 IT社会にどっぷり浸かっている私たちは、音楽視聴や動画閲覧などさまざまなコンテンツを利用しますが、その課金モデルを学ぶことから授業は始まりました。学生がコンテンツを利用したいと考える時、そのサービスが無料もしくは安価であることが採用基準の一つになっていることでしょう。宮脇先生のご講義では、無料のサービスはなぜ無料で成り立っているのか、コンテンツが利用者に届くまでにどのような事業者が関与しているかについて、プラットフォーム事業者であるLINEのビジネスモデルを事例に、ご説明頂きました。

 学生に与えられた課題は、「LINE株式会社の担当者(チーム)になったつもりで、LINEの事業の今後の展開(新規事業の開発、既存事業の改善)を提案してください」です。事業内容、事業者としての立場、ターゲット、課金方法、利用者にサービスを届ける方法、サービス提供の理由など、さまざまな観点から検討しました。
 学生からは、自転車や充電器のシェアリングプラットフォーム、LINEクラウドファンディング、LINEでMeetingといった提案があり、宮脇先生からは、競合他社との差別化、収益、実現可能性などの観点でコメントを頂きました。

 授業後の学生の感想をいくつかご紹介いたします。

  • 実際に自分が使っている身近なサービスは、サービスを届けるまでに多くの事業者が関与しているということを改めて認識しました。
  • 先生から「就職先として、プラットフォーム事業者とコンテンツ事業者、どちらがいいと思うか?」と質問を受け、私はコンテンツ事業者がいいと思いました。時代に求められるプラットフォームを選ぶことができるからです。ITビジネスは展開が早いので、柔軟な方がよいと考えました。
  • 実際に使っているLINEで新しくどんなことが出来るか、考えることができた。LINEは携帯電話番号に1つのIDだから、複数のコミュニティで使い分けたい人にとっては、LINEより有益なサービスもある。LINEの独自性がどこにあるのか、より考えるきっかけになった。

 このように、学生の学びも深いものがありましたが、私自身、一教員としても、宮脇先生の授業の進め方から学ぶことは多かったです。宮脇先生は、毎回必ず個人課題を出されます。学生は次の授業時に課題を持ち寄り、時間内でグループメンバーのアイデアを一つにまとめます。つまり、学生はスライドの作成、プレゼン練習をする時間はなく、スライド無しでその授業時間内に発表することになります。学生は与えられた20分程度の時間でアイデアを共有し、良いものに絞ったり、相性のよさそうなアイデアを掛け合わせて新しいものを生み出します。その20分程度のグループワークと発表を見て、学生の「瞬発力」を実感し、学生の学びを引き出すのに非常に有益な方法だと思いました。また、授業外のグループワークでは、グループメンバー内の作業量や質に大きな差が生まれることがありますが、宮脇先生の進め方ではその差が少なくなると感じました。私がこれまで経験した授業でこの方法を用いたことがなかったので大変参考になりました。この方法を積極的に導入していきたいです。会計ファイナンス学科では教員同士の横のつながりも重視しており、お互いの専門分野を融合させることで、1つの授業で「相乗効果」を狙っています。

 改めまして、株式会社国際社会経済研究所宮脇啓透先生、ありがとうございました。