授業紹介:マネジメント・ケーススタディ②
会計ファイナンス学科教員の伊勢坊です。
前回(https://www.swukaikeif.jp/class/4555/)に引き続き、担当授業「マネジメント・ケーススタディ」について、ご紹介します。
今回は食品業界についてです。ご講義いただいたのは、元アサヒグループHD株式会社取締役で、現昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員の古田土俊男先生、カルビー株式会社研究開発本部次世代商品開発部長の柚木英明先生です。カルビー株式会社と昭和女子大学はシンポテトの新しいフレーバーを共同開発したことがあり(https://www.calbee.co.jp/thinpotato/pj/)、縁深い企業の一つです。
古田土先生のご講義は、食品業界を取り巻く環境と課題についてでした。人口構造や就業構造の変化から、少子高齢化が進み食品業界の市場が縮小していくということが示されました。また、COVID-19の影響による人々の暮らしの変化、原材料の高騰、ライフスタイルの変化等も加わり、これからの食品業界は、既存での延長ではなく、今の時代にあっているかという点を考慮した市場開拓、商品開発を行う必要があることが言及されました。柚木先生からは、カルビー株式会社の概要をご説明いただくとともに、主要商品であるポテトチップスの商品数、開発にかかるおおよその期間、商品開発と製品工場の関係等、学生にとって身近な商品が店頭に並び顧客の手元に届くまでをご説明いただきました。加えて、日本と海外の物価の差について柚木先生の実体験からお話があり、食品業界はこれから市場をどこに設定するのかなど、考えさせられるお話がありました。
学生に与えられたテーマは、「カルビー社の新商品開発」です。カルビー社といえば、ポテトチップス、じゃがりこ、Jagabee、かっぱえびせん、フルグラ等、食べたことがない人はいないのではないかというほどのヒット商品を有する企業です。しかしながら、ポテトチップス等で必要なジャガイモへの依存度の高さ、油や小麦粉などの原材料の高騰、人口減少に伴う食品業界市場の縮小といった問題を抱えており、カルビー社はこれからどのような商品を開発していくことができるかを考えることが今回の課題です。
学生からは、米粉のフルグラスコーン、西欧諸国での玄米ポテトチップス販売、オリジナルチップ×各国のディップソースの高級店販売、世界各国の味が楽しめるJagabee(おまけのシール付き)、「毎日の悪あがき!」をキャッチコピーとした大豆スナックといった新商品が提案されました。テスト販売地域選定やペルソナ設定では、これまでの授業で学んできた知識が総動員されていました。また、商品化できるか実際に試作試食するグループもあり、力の入った企画提案でした。
古田土先生、柚木先生からは、販売時期、価格設定などについて質問がありましたが、オリジナリティの高さに加え、実現可能性の高い原材料提案や現実味のある価格設定が出来ているというお言葉をいただくことができました。
授業後の学生の感想をいくつかご紹介いたします。
●食品業界を取り巻く環境であったり、カルビーの課題について学んだことで、一見安定したイメージのあった食品業界への印象が大きく変わった
●世間にウケる商品を考えるのが会社の役目だと考えていたが世界的な食糧や社会問題にも向き合う役目があることが新しく学べた
●実際に販売することを考えたリアルなフィードバックをいただき、商品企画をする際にどこまで考えなければいけないのかを知ることができました
●食品業界にとても興味を持ちました!少子高齢化が与える影響というものをあまり経済的に考えたことなかったのですが、人口が減るというのは、消費が減るということで、食品業界のみならず、日本経済全体で考えなければならない問題なのだなと感じました。
食品業界は人々の生活に密接に結びついた身近な存在であるためか、学生の目には安定した業界として映っているようでした。しかし、古田土先生の講義の中で触れられた人口減少の話から、人口が減ることで起こる問題がなぜ食品業界に影響を与えるのかを理解することができたようです。また柚木先生の講義の中で、実際に商品を開発する際には市場、ターゲット、各業界や企業が抱える課題を踏まえて考える必要があることを知り、実際の提案でその難しさを体感したようです。
改めまして、古田土俊男先生、柚木英明先生、ありがとうございました。
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