朝日生命寄付講座「金融ビジネスのニュートレンド」(3)

 会計ファイナンス学科教員の安藤です。

 会計ファイナンス学科では、企業と連携した実践的な授業を数多く開講しています。今回は、朝日生命保険相互会社様と連携して実施している寄付講座「金融ビジネスのニュートレンド」の様子をご紹介します。

 今回は、朝日生命保険相互会社ダイレクト事業部の内崎晃様を講師にお迎えし、「生命保険会社のマーケット戦略について」と題してご講義を賜りました。朝日生命保険の基本からマーケットの現状、そしてICTを活用したデジタルマーケティングまで、生命保険ビジネスの今を俯瞰する内容となりました。

 講義の前半では、生命保険がどのように人々の人生に寄り添っているのか、その本質から丁寧にご説明いただきました。人生には、病気やけが、働けなくなるリスク、介護、老後といった様々な不安があり、これらを社会保障だけで完全に支えることは難しい現実があります。だからこそ、民間の保険は「安心を買う金融商品」として、私たちの暮らしを支える重要な仕組みとなっています。生命保険は、多くの人が掛け金を出し合い、いざというときに支え合う相互扶助の考え方に基づいており、長い歴史の中で社会に根づいてきた制度であることがよく理解できました。

 続いて、生命保険のニーズを支える社会的背景についても解説がありました。少子高齢化が急速に進む日本では、医療・介護の負担が年々増えており、若い世代にとっても将来の不安は大きくなっています。具体的に必要とされる介護費用がどの程度かを尋ねるクイズも実施され、受講生は真剣に考えていました。また、単独世帯の増加や女性の社会進出といったライフスタイルの変化が、保険の必要性や加入のあり方を大きく変えつつあることも紹介されました。こうした社会構造の変化が、医療保険やがん保険といった「生きるための保険」への関心を押し上げています。

 マーケットの数字も非常に興味深いものでした。日本人の約8割が生命保険に加入しており、「日本は保険好き」と言われるほど加入率が高く、2024年度の国内の個人保険・個人年金保険の合計保有契約高は790.7兆円にのぼることが示されました。保有されている保険の種類も時代とともに変化しており、近年では医療保険やがん保険が主力になってきているそうです。また、以前は多く契約されていた定期付終身保険の割合が減少し、代わりに一生涯の保障を準備できる終身保険の割合が増加していることも紹介されました。販売チャネルも多様化し、従来の対面営業に加えて、保険ショップや銀行の窓口、さらにはインターネットからの申込みなど、消費者が保険へアクセスする方法も広がっています。

 講義の後半では、デジタル時代における生命保険ビジネスの変革がテーマになりました。デジタルチャネルを整備し、Web上で申込みが完結する仕組みを整えることで、これまで接点を持ちにくかった層にもアプローチできるようになっているそうです。さらに、他企業のプラットフォームと協業し、その世界観の中で保険に加入できる仕組みを構築している事例も紹介されました。データを分析し、顧客の行動傾向に合わせて効率的に保険提案を行うなど、これまでの「保険は対面で説明を受けて加入するもの」というイメージを大きく覆す取り組みが進んでいます。

 社会の変化を的確に捉え、伝統的な相互扶助の理念は保ちつつも、新しい顧客体験を追求する生命保険業界の姿に、学生たちも金融ビジネスの奥行きと広がりを感じたようでした。内崎様、丁寧で興味深いご講義を本当にありがとうございました。

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