朝日生命寄付講座「金融ビジネスのニュートレンド」(4)
会計ファイナンス学科教員の安藤です。
会計ファイナンス学科では、企業と連携した実践的な授業を数多く開講しています。今回は、朝日生命保険相互会社様と連携して実施している寄付講座「金融ビジネスのニュートレンド」の様子をご紹介します。
今回は朝日生命保険相互会社 デジタル戦略企画部 ASAHI DIGITAL INNOVATION LAB より、菅原様、眞宮様のお二人を講師にお迎えし、「DX戦略と ASAHI DIGITAL INNOVATION LAB の取り組み」と題してご講義を賜りました。生命保険会社におけるデジタル戦略の最前線について、実務の視点から分かりやすくお話しいただける貴重な機会となりました。
講義の前半では、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」とは何かについて、丁寧にご説明いただきました。DXとは、単に新しいデジタル技術を導入することではなく、データやテクノロジーを活用して、製品・サービス、業務の進め方、さらには企業文化までを変えていく取り組みを意味します。
続いて、朝日生命ではそのDXをどのように進めているのかという話題へと展開していきました。お二人が所属されている ASAHI DIGITAL INNOVATION LABは、朝日生命の中で、お客様に新しい体験価値を届けること、社内の業務をより効率的で創造的なものに変えていくこと、そして生命保険事業にとどまらない新たなビジネスモデルを生み出すことを使命として、次世代の保険ビジネスの姿を探究している組織です。

その具体例として紹介されたのが、メタバースを活用した取り組みです。朝日生命では、TOPPANが運営するメタバースモール「メタパ®」の中に「朝日生命メタバース支店」を展開し、仮想空間上で商品情報や各種コンテンツに触れられるようにしています。また、メタバース空間を用いた新卒採用イベントも実施しており、参加者はアバターを通じて匿名かつ気軽に人事担当者や若手社員と交流できるとのことでした。実際の画面を用いたデモンストレーションもあり、学生にとっては「新しい顧客接点」が具体的にイメージできる内容となりました。
講義の後半では、近年急速に注目を集めている生成AIや機械学習についても、実演を交えた解説が行われました。Adobe Firefly を用いて、楽曲タイトルからイメージ画像を生成し、その画像から曲名を当てるクイズを行うなど、学生が楽しみながらAIの表現力を体感できる工夫が凝らされていました。技術を「知識として理解する」だけではなく、「体験として理解する」時間になったように感じます。
さらに、朝日生命が取り組む認知症エコシステムの構想についてもご紹介がありました。これは、認知症の予防や早期発見、発症後の生活支援までを一体的に捉え、さまざまなサービスやデータを連携させることで、一人ひとりに合ったサポートを実現しようとする試みです。少子高齢化が進む日本社会において、認知症は今後ますます重要なテーマとなりますが、生命保険会社が保険商品にとどまらず、こうした社会課題の解決に向けて具体的な取り組みを進めていることに、学生たちも強い関心を寄せていました。
講義の締めくくりとして、「VUCAの時代」というキーワードが紹介されました。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉で、将来の見通しが立てにくい現代社会の特徴を表しています。そのような環境の中で、ASAHI DIGITAL INNOVATION LAB では「考えすぎて立ち止まるのではなく、小さくても良いのでまずはやってみる」「既存のやり方に固執せず、新しい選択肢があれば柔軟に切り替える」といった姿勢を大切にしているとのお話が印象的でした。
今回の講義を通じて、学生たちは、デジタル技術が金融ビジネスをどのように変えつつあるのか、そして生命保険会社がどのように社会課題の解決に取り組んでいるのかを具体的に学ぶことができました。同時に、変化の激しい社会の中で、自ら学び続け、変化を前向きにとらえていくことの大切さを改めて考える機会にもなりました。
ご多忙のなか、本学の教育にご協力くださった菅原様、眞宮様に、心より御礼申し上げます。
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