授業紹介:マネジメント・ケーススタディ③

 会計ファイナンス学科教員の伊勢坊です。担当授業である「マネジメント・ケーススタデイ」について、既に掲載した授業紹介:マネジメント・ケーススタディ① 及び に続き、ご紹介いたします。

 今回、ご講義いただいたのは、望月雄介先生です。望月先生は、新卒以降一貫して人事畑を歩まれている人事のスペシャリストです。ご講義では、人事の各機能を概観し、日本企業において人事が求められる役割変化について、時代背景や産業変化の観点からご説明いただきました。

 「人事」に求められる役割は、労働者の管理から、社員を多様性のあるタレントとして捉え、重要な人的資源としてマネジメント・サポートしていくことへと大きく変化しており、それは「戦略人事」という言葉で説明されます。この「戦略人事」の機能は、経営者とともに人材マネジメントを行い、企業バリューやミッションを浸透させ、企業目標を実現できる組織を作るというもので、非常に大きな役割を担っていることがわかります。

 学生に与えられた課題は、大きく二つです。一つはダイバーシティ、二つは働き方改革です。いずれも、法整備とともに各企業が改革のための取り組みを進めていますが、上手くいっていない企業もあるようです。なぜ上手くいかないのか、その理由・原因、それを解決するための方法について提案する、という課題です。

 学生たちは、ダイバーシティ、働き方改革のいずれかを選択することになっていましたが、全グループが働き方改革を選択しました。データを用いて課題を明らかにした上で、業務計画遂行表の作成、新卒からの新しい育成プログラムの実施、男性の育休制度の多様化といった提案がありました。望月先生からは、法制度の整備では超えられない点、実現可能性などの観点でコメントを頂きました。

 授業後の学生の感想をいくつかご紹介いたします。

  • 社員一人一人の特徴を捉えていくというのは難しそうに見えますが、仕事内容を楽しそうにお話しされているのを聞いて、人事の仕事が本当に好きなのだなと思いました。私も自分が楽しく働ける仕事を見つけていきたいです。
  • 人事の仕事は、採用や評価が主であると勝手に思っていたが、それだけではなく、人事戦略の企画立案からバリューやミッションの浸透など仕事内容が多岐にわたるものだと知る事ができた。多様性の受容など社会全体の動きが変わるなかで、人事の役割が大きく変化していく過程も興味深いと感じた。
  • この講義を受ける前までは人事という役割に対する印象が薄く、人材の管理というイメージしかなかったです。しかし、実際には経営の方向性にとても大きな影響を与える重要な業務がいくつもあり、必要不可欠で「感情」を扱う最も難しい業務であることを学びました。特に社員はタレントであり、重要な人的資源としてマネジメント・サポートしていくという考えが、近年の働き方や人々の仕事に対する意識、多様性を重視する社会にマッチしていて、人事が企業にもたらす影響を最大化できる考え方だと感じました。

 望月先生のご講義の中で、「人事とは、経営資源(ヒト・モノ・カネ)のヒトを扱うもので、経営資源の中で唯一「感情」という難しいものを取り扱う」というお言葉があったのですが、学生の発表を通じても、よりこのお言葉の重さを実感しました。法律や制度は整っているのになぜうまくいかないのか、それは望月先生の仰る「感情」に由来するからだと感じます。また、働くことに関する意識の変化が求められていますが、それは企業だけが担うものではなく、我々のような教育に従事する者にも大きな責任があるように思います。

 望月先生のご講義は、就職活動を控える学生にとって「働き方」に関する問題提起であり、自分はどのように働きたいかを考えるきっかけになったはずです。とても良い学びに繋がったと感じました。このような問題提起を受け、大学での学びを職業生活への導入として接続させるべく、会計ファイナンス学科では、実務経験のある方々を講義にお迎えし、共に考える機会を大切にしております。

 改めまして、望月雄介先生、ありがとうございました。